PR
INTERVIEW
2024.01.15

ブックデザインの現場

第1回 本と出合う
本と出合う。 ブック・デザインの現場は、紙媒体の市場規模が縮小する一方でにわかに盛り上がりを見せている。 ブック・デザイン特集第1回目は、「本と出合う現場」として、いま行きたいアート・ブックフェア、ブックストアを紹介し、 その背景や傾向に迫る。
文・編集
編集部

1.nostos books

渋谷駅からバスで約20分、のどかな商店街のなかでひときわ賑わうブックストア「nostos books」。スタッフにより厳選された書籍が並ぶ。ジャンルはデザインやアートを中心にしつつ、カルチャーや自然博物誌など幅広い。

並ぶ本のなかから目的の作家やジャンルの本を探しているうちに、棚が独特なレイアウトで配置されているということに気付かされる。 nostos booksでは、一般書店や図書館のような作者別・カテゴリ別のレイアウトとは異なり、年代別や大まかなテーマ別などで本が並べられている。そのこだわりのレイアウトにより、想定外の本と出合うことができるのだ。例えば、画集の横にタイポグラフィに関する本が並べられていたり、「自然をみつめるまなざし」をテーマにした棚に写真集や図鑑、エッセイなどが並んでいたりと様々である。

また、毎週金曜日に品出しするときや店内で展示を行うときにも棚のレイアウトが変わるので、訪れる度に新たな発見ができるようになっている。3月1日まで開催中の食にまつわる特集「満腹眺本」では、食をテーマにしたコーナーが設置されているのでそちらも必見だ。

 思わぬ知識と出合い視野を広げていくことは、デザイナーにとって非常に重要なことであり、豊かな発想のきっかけとなる。図書館で著者名から書籍を探すことも一つの出合いであるが、直感を使い、出合うはずのなかった本に手を伸ばしてみてはどうだろうか。まさにこのレイアウトこそがお店のこだわりであり、nostos booksのコンセプトである「新しい過去の発見」だ。 nostos booksに行くことで、いままで自分になかった価値観と出合うことができるだろう。

——————————————————————————      
〔information〕 
nostos books 
住所:東京都世田谷区世田谷4-2-12 
営業時間:12:00~19:00 
定休日:水 
TEL:03-5799-7982 
WEB:https://nostos.jp 
——————————————————————————

2.世界のブックデザイン2018-19

看板画像

印刷博物館で3月29日まで開催中の「世界のブックデザイン2018-19」展(※新型コロナウイルス感染拡大防止を図るため臨時休館中)。本展では、世界でもっとも美しい本コンクールの入選図書が並び、世界最高峰のブックデザインを手に取って見ることができる。最先端の造本技術と間近で触れ合えるので、ブックデザインに携わる人々に話題の展示となっている。

1.Dionne Brand 著 『Theory』Knopf Canada発行

アルクイン・ソサエティ・カナダ・ブック・デザイン賞 2018入賞

2.Norio Nakamura(中村至男) 著 『PIXEL ZOO』 Edition Bracklo発行 ©︎Stiftung Buchkunst/Uwe Dettmar, Frankfurt am Main 

ドイツの最も美しい本 2019入賞

3.Jaroslaw Kubiak, Daniel Wittner, Felix Holler 著 『Name Waffe Stern- Das Emblem der Roten Armee Fraktion』 Institut für Buchkunst an der HGB Leipzig 発行

Felix Holler, Jaroslaw Kubiak, und Daniel Wittner デザイン

ドイツの最も美しい本 2019 エディトリアルデザイン財団賞

それぞれの本自体の魅力はもちろんだが、キャプションとともに書かれたコンクール審査員のコメントが興味深い。審査員のコメントを読むと、テーマに向けての表現、装丁、綴じ方、文字組、紙の質、本の重さまで的確に評されており、本を手に取った際に美しいと直感する理由が明白になる。

Jerzy Gawronski & Peter Kranendonk 著 『AMSTERDAM STUFF』 Van Zoetendaal Publishers & De Harmonie, Monumenten & Archelogie Gemeente Amsterdam 発行      
世界で最も美しい本 2019 金の活字賞

いっぽうで、装丁に関する改善点が書かれている場合もあり、その先のより美しいブック・デザインの可能性まで示してくれる。本を手に取り、審査員コメントを読み、もし自分がこのテーマでブック・デザインするとすれば、どのようなものがつくれるだろうか、と考えながら眺めていくのも面白いかもしれない。本展覧会に行くことで、ブック・デザインと向き合う姿勢がより新鮮なものにアップデートされるはずだ。

1.Nele Brönner 著 『Begel, der Edel』 Luftschacht Verlag, Wien 発行      
©︎ Stiftung Buchkunst / Uwe Dettmar, Frankfurt am Main      
ドイツの最も美しい本 2019入賞      
2.Asfa-Wossen Asserate, Philipp Hübl 他 著『Tugenden für das 21. Jahrhundert』      
Nicolai Publishing & Intelligence GmbH, Berlin 発行      
©︎ Stiftung Buchkunst / Uwe Dettmar, Frankfurt am Main      
ドイツの最も美しい本 2019 入賞

——————————————————————————      
〔information〕 
「世界のブックデザイン2018-19」展 
会期: 2019年12月14日〜2020年3月29日 (※新型コロナウイルス感染拡大防止を図るため臨時休館中) 
会場: 印刷博物館 P&Pギャラリー 
住所: 東京都文京区水道1丁目3番3号 トッパン小石川ビル 
開館時間: 10:00〜18:00 
休館日: 月(2月24日は開館)、2月25日 
TEL: 03-5840-2300 
料金:無料 
WEB:https://www.printing-museum.org/exhibition/pp/191214 
主催: 凸版印刷 印刷博物館 
——————————————————————————

3.BOOK AND SONS

タイポグラフィをメインにグラフィック・デザインに関する書籍を取り揃える「BOOK AND SONS」。近年は店内の展示スペースで写真展が開催されていることもあり、タイポグラフィの他にも写真集の仕入れが増えてきている。

1月10日〜26日に開催されていた、SARAI MARI写真展「DELUSION×のぞき展」

デザイナーとして活動するオーナーが独学でデザインを学んだ経験から、デザインを学ぼうと考えるすべての人に価値のある出合いがあってほしいという思いで「学び」のある本を選び、仕入れるという。結果、絵本や画集よりもグラフィック、イラスト・デザイン自体を紹介し解説する書籍が多い。そうした「学び」のある本を、デザインへの入口ともなる話題の新書から、常連の来店客の声を拾って仕入れたコアな本まで幅広く取り揃えている。実際に、デザインに特別詳しくなかったスタッフも街角の看板のロゴなどを紹介する書籍を見て、タイポグラフィへの関心が増し、街を歩く際に意識するようになったそうだ。

そして、BOOK AND SONSの最近のピックアップの一つ、『Olympic Games: The Design』を紹介する。1896年のアテネから2020年の東京まで、オリンピックの歴史とデザインを追った一冊である。その時代の象徴とも言えるオリンピックに関するデザインがまとめられている。本自体の装丁としても、ボックス2冊合わせると約10センチの厚みがあり、オリンピックの規模の大きさを感じることができる。金で箔押しされたタイトルは、オリンピックの華々しさを感じさせる。「東京2020」という区切りにぜひ手にとって読みたい一冊である。  
さらに今後も、2020五輪に向けてオリンピック関連の書籍も増やしていくそうだ。

『Olympic Games: The Design』

写真展からは新鮮なインスピレーションを、本棚からは深く専門的な知識を学び得られるだろう。「BOOK AND SONS」に訪れて、自身のデザイン観を掘り下げてみてほしい。

——————————————————————————      
〔information〕 
BOOK AND SONS 
住所:東京都目黒区鷹番2-13-3 キャトル鷹番 
営業時間:12:00〜19:00 
定休:水曜 ※最新の定休日、営業時間はTwitter上でお知らせ 
TEL:03-6451-0845 
WEB:https://bookandsons.com 
——————————————————————————